伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』(日本経済新聞社、第3版、2003)演習問題解答例

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第10章 組織構造

1.
 それが可能であるならば、前者の三つの課に分ける案のほうがよい。そのほうが課長の数が少なくて済むのでその分生産に人員を割くことができ、また課と課の間の調整も容易だからである。しかし無理にそのような分け方をして混乱を生じるようであれば、10の課を作るほうがよい。つまり、きちんと管理できるのであれば前者が望ましいが、無理であれば後者にするほうがよい。

2.
 カンパニー制とは、企業内の事業部を、独立した会社であるかのように扱う制度のことである。特に、独立採算制にして広範な権限を各社内カンパニーに与えるのがその特徴である。事業単位で組織をマネジメントするという点では事業部制と本質的に異ならず程度が異なるだけだと言えるが、予算の裏付けのある決定権限を移譲するという点では、別法人を作る分社化に近く、事業部制とは本質的に異なるとも言える。

3.
 「組織構造は戦略に従う」というのは、戦略のほうが企業にとって本質的に重要であり、例えば業績が悪化したからといって組織構造をいじったとしても、それだけで自動的に戦略が最適化されて業績が回復するわけではないということである。他方で「戦略は構造に従う」というのは、与えられた構造に応じて自ずと戦略が絞られるという意味ではないかと推測する。両方の言葉がともに正しいとすれば、企業の根本となる広義の戦略が組織構造を規定し、その組織構造が狭義の戦略を規定するという意味で正しいのではないかと考えられる。


作成:浅野直樹
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