伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』(日本経済新聞社、第3版、2003)演習問題解答例

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第11章 インセンティブシステム

1.
 ①銀行の窓口係は生活の糧を得るためや人間関係のために働いているという一般論が考えられる。銀行の窓口係は安定した仕事の定番であり、そこで配偶者を見つけるということも多いと聞く。
 ②メーカーの研究開発担当者は自己実現が主な理由で働いているのではないかと推測できる。というのもそこで働くのは理系の大学院卒者が多数で、彼らはこれまでに学んできたことを生かせるかどうかを重視しているようだからである。
 ③事業部長は尊厳のために働いているという要素が大きいのではないだろうか。事業部長になることができるのはほんの一部であり、大きな名誉が伴うからである。
 このように、職種によって「ひとはなぜ働くのか」についての想定される答えが異なるので、職種の間を貫く一般論を立てるのは難しいと思われる。

2.
 インセンティブには金銭的なインセンティブと、ポストのような非金銭的なインセンティブがある。一時点を取ると、どちらも可能な一定の大きさが決まっている。しかし、企業が成長すれば、インセンティブに使える金銭が増加することはもちろん、重要なポストも増えるので、他の人のやる気をくじかずにインセンティブを分配しやすくなる。

3.
 給与などの金銭的報酬が組織のインセンティブとしてとくに重視されることが多いのは、それが最も自由に使える手段であり、微妙な調整もでき、計量可能なため納得感も生まれやすいからである。日本では長期雇用が前提とされるため、人間関係の中での評価もインセンティブとしての効果が高いが、アメリカでは給与などの待遇に応じて転職をすることが是とされているため、評価的、人的インセンティブの効果が小さく、相対的に金銭的報酬に頼る傾向が強いと思われる。


作成:浅野直樹
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